中学受験を取り巻く現状と志望校選びの新たな潮流
2025年2月1日に迎える中学受験の解禁日を控え、東京・神奈川の「御三家」と呼ばれる難関校における確定出願倍率が発表されました。1月23日時点での倍率は、男子御三家の開成4.1倍、麻布2.5倍、武蔵3.2倍、女子御三家の女子学院2.9倍、桜蔭2.3倍、雙葉3.9倍といった数値です。いずれも前年より微減しており、この傾向が中学受験全体における変化を反映していると見られます。
志願者数の減少とその背景
御三家の倍率が下がっている背景には、少子化による受験生全体の減少が影響していると考えられます。しかし、全体的な中学受験率は高まっており、特に中堅校と呼ばれる学校への志願者数が増加しているのが特徴です。これは、偏差値や進学実績だけで学校を選ぶ従来の基準が見直されてきたことを示しています。
「御三家」や超難関校を目指す受験生が減少傾向にあると言っても、これは「完全な敬遠」とは言えません。子どもの学力や性格、家庭の教育方針に基づいて慎重に学校を選ぶ家庭が増え、6年間の教育内容や学校の特徴を重視する風潮が強まっています。これは、御三家合格後に進学を辞退し、別の学校を選ぶケースが増加していることからも分かります。
御三家にA判定をもらうような子でも100%受かるわけではありません。BやCで受かる子がいることを考えれば当然です。当日の問題の相性、体調、緊張で点数は乱高下します。そうなったときにチャレンジせずに確実に取れるそれなりの進学校を狙うというのは当然の判断とも言えます。
中学受験ならではの特性も影響
中学受験は大学受験と異なり有名学校がすべて2月1日に受験を行います。そして別日程もありません。つまり1択なのです。大学受験は同レベル帯の大学を併願することが当たり前です。早慶を受ける子がどちらかしか受けられないということはありません。また上智やMARCHなどの大学も様々な入試様式で複数回受けれることがほとんど。国公立は一つしか選べませんが私大とは日程が重なりません。つまり大学受験は多少の乱高下はあれど第一志望のレベル帯を一つしか受けられないということは絶対にありません。しかし中学受験は御三家レベル帯の子が御三家をすべて受けるということができません。本当は受けたいのにです。御三家すべて受けるチャンスがあればどこか受かるかもしれないのに。残酷ですね。御三家を複数回受けたいという受験生の意志はサンデーショックの年の倍率をみれば明らかです。特に女子は女子学院が1日からずらすため大きな競争となります。埼玉の栄東や千葉の渋幕などが好調なのもやはり日程が違うからということが大きいです。これらの学校も2月1日にしか試験がなければこんな倍率は絶対に出ません。
中学受験の変化:学校選びの多様化している
近年、教育方針の多様化が進む中で、学校によっては最新のIT環境を整備し、タブレットを支給したり、タイピング練習を課題にするなど、時代に即した学習環境を提供しています。また、プロジェクト型の授業を導入し、21世紀型スキルと呼ばれるリーダーシップやプレゼンテーション能力、コミュニケーション能力の育成にも力を入れる学校が増えてきました。
その結果、ブランド力のある伝統校だけでなく、教育方針やカリキュラムが充実している学校が注目を集めています。親たちが偏差値だけでなく、「学校が掲げる目標」「提供するコースの内容」まで調査して志望校を選ぶ時代となりました。この変化の背景には、6年間という長い期間が子どもの人格形成に大きな影響を与えるため、納得できる学校選びを求める保護者が増加しているという現実があります。
ネット社会において情報がどこからでも取れるようになった今、とりあえず偏差値の高いところに行けばいいやという時代が終焉を迎えているのも又事実なのです。
難関校に適した子ども、そうでない子ども
難関校に向く子どもとそうでない子どもがいることも、志望校選びの際に重要なポイントです。地頭が良く、塾での学習を短時間で吸収できる子どもや、好奇心が強く、学ぶこと自体を楽しめる子どもは、御三家や超難関校での厳しい学習環境に適応しやすい傾向があります。
一方で、親の支援を受けながら「無理に勉強させられてきた」子どもが難関校に進学すると、入学後の学習や成績維持に苦しむことが少なくありません。自分での勉強習慣がないため一人で勉強ができず早すぎる勉強進度についていけなくなり気づいたころには深海魚暮らしとなってしまう子も少なくありません。
特にメンタルが弱い子どもは、競争の激しい環境に適応できず、不登校や転校を余儀なくされる場合もあります。一度負のスパイラルに陥ると、自信を失い、勉強への意欲を取り戻すのが難しくなることもあります。このようなリスクを考慮し、子どもの性格や学力の特性に合わせた慎重な志望校選びが求められています。
難関校進学後の現実
御三家や滑り止めの上位校に進学した生徒たちの多くは、テスト前に徹底した努力を重ねる厳しい競争環境に身を置くことになります。成績上位を目指す生徒たちは、テストが返却されると次の目標に向けてすぐに動き出すという、非常に高い意識を持って日々を過ごしています。
しかし、このような環境では、学習意欲が低い子どもや、詰め込み型の勉強で合格を勝ち取った子どもがついていけなくなるケースもあります。親が中学受験時に積極的にサポートしてきた子どもは、進学後にその支援がなくなると、自力で勉強を進める方法が分からず、成績が低迷することもあります。さらに、反抗期に入った子どもへの親のサポートが難しくなることも負担を増大させます。
こうなるとただ偏差値の高い学校に行かせればいいではなく子供の相性を見て少人数制で一人一人しっかり見てくれる学校の方がいいなという家庭も増え御三家を避けるケースも増えるのです。
志望校選びの重要性
結論として、中学受験の志望校選びは、偏差値や進学実績だけでなく、子どもの性格、学力、将来の方向性に合致する学校を選ぶことが不可欠です。中高の6年間は、子どもの人格や価値観が大きく形成される時期です。この期間を子どもにとって有意義なものにするためには、保護者が学校の教育内容や環境について慎重に検討し、納得できる選択をする必要があります。
また、学校選びはゴールではなくスタートです。進学後の学習環境や子どもの適応状況を継続的に観察し、必要に応じてサポートを行うことで、子どもの可能性を最大限に引き出すことができます。中学受験を通じて得られるのは「合格」の結果だけでなく、将来に向けた大きな成長の機会でもあるのです。