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激化する中学受験:中学受験の今昔

中学受験ブログ / 2026年5月13日

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中学受験ブログ 2026年5月13日

激化する中学受験:中学受験の今昔

今の中学受験は昔よりはるかにきつい

親世代の常識が通用しない時代へ

「自分も中学受験をしたから、子どもの気持ちはわかる」――そう思って伴走を始めたものの、開いた問題集に絶句した、という保護者の方が今、本当に増えています。塾の説明会で「20年前の開成中の入試問題が、今の偏差値50前後の学校で出題されるレベル」という話を聞き、頭を抱える方も少なくありません。同じ「中学受験」という言葉でも、親世代が経験したそれと、今の子どもたちが挑むそれとは、もはや別物と言ってよいほど様変わりしています。

今回は、なぜここまで中学受験が「きつく」なってしまったのか、その背景をひとつずつ紐解いていきたいと思います。

受験者数と受験率に表れる「中学受験の過熱」

まず数字から見てみましょう。首都圏模試センターの集計によると、2024年の首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)における私立・国立中学の受験率は約18.12%と、過去最高を記録しました。2025年も受験者数は微減にとどまり、受験率はほぼ横ばいの高止まり。少子化で子どもの数そのものは減っているにもかかわらず、受験する子の「割合」は増え続けているのです。

東京都内に目を移すと、もはや「5人に1人どころではない」状況になっています。教育熱の高い港区や文京区といったエリアでは、小学校受験の段階で半数以上の家庭が動くという話もあり、近所のお友だちと帰り道に遊ぶ、という何気ない光景すら、塾通いで成立しにくくなってきました。

1980年代の中学受験参入率が10%台前半だったことを考えると、まさに「景色が違う」と言うほかありません。

情報の洪水が変えた、受験のかたち

スマホ一台で「情報戦」の渦中へ

かつて中学受験の情報は、塾の窓口、書店に並ぶ限られた受験雑誌、あるいは口コミ――そんな限られた経路でしか手に入りませんでした。地方在住の方が首都圏の私立校情報を集めるのは至難の業で、「知らなかったから受けなかった」というご家庭も珍しくなかったのです。

ところが今は、X(旧Twitter)を開けば現役の塾講師や受験を終えた保護者の生々しい声が流れ、YouTubeでは志望校別の解説動画が無数に公開され、Instagramでは「中受アカウント」が日々の学習風景を共有しています。読売新聞と電通総研の共同調査でも、中学3年生の75%が日常的にSNSからニュースを得ているという結果が出ており、情報の入り口そのものが大きく変わったことがうかがえます。

もはやスマホは生活インフラの一つとなり、持っていないほうがおかしい、そんな時代になっていきました。

「知らない」では済まされない時代の苦しさも

情報が手に入りやすくなったのは、もちろんありがたい面もあります。けれども一方で、「他のおうちは過去問をもう3周している」「あの塾はこのテキストを使っている」といった情報が次から次へと目に飛び込んでくるため、保護者の方が情報の波に呑まれて疲弊する、という新しい悩みも生まれています。

日本経済新聞の連載でも、「中学情報を取ることそのものが目的化して時間を溶かしてしまう保護者」の存在が指摘されていました。情報がないことの不安より、ありすぎることの不安――これは、親世代が経験しなかった重さだと言えそうです。

子どもにお金をかけられる家庭が増えた

教育費支援の拡充

ここ数年、子育て世帯への公的支援は確実に厚みを増しています。高等学校等就学支援金制度の拡充により、2025年度からは所得制限なしで授業料無償化の方向に大きく踏み出し、2026年度にはさらに対象が広がる見込みです。高等教育の修学支援新制度でも、令和7年度から多子世帯の大学等の授業料・入学金が、所得制限なく一定額まで無償となる仕組みが整いました。給食費の無償化に踏み切る自治体も全国に広がっています。

公的に教育費の一部が支えられるようになれば、その分、家計の余力を私立中学の学費や塾代に振り向けることができます。「中学受験をさせたくても経済的に厳しい」と諦めていた層が、無理なく参戦できるようになった。これも、受験者層の裾野が広がった一因と考えられます。

一人っ子・共働き世帯という追い風

少子化が進み、お子さんが一人だけというご家庭が増えました。きょうだいで分け合うはずだった教育予算が、一人に集中するわけです。さらに共働きが当たり前になり、世帯収入そのものが上がっているケースも多く見られます。

塾の月謝、季節講習、模試代、志望校別特訓:中学受験には少なくない費用がかかります。そのコストを「払える家庭」が増えたことが、過熱の構造を下支えしているのです。

コロナ禍が浮かび上がらせた、公私の差

2020年春、突然の一斉休校はすべての学校に降りかかりました。けれども、そこから先の動きには大きな違いがありました。

私立中高の多くは、休校期間中に矢継ぎ早にオンライン授業の体制を整えました。Zoomを使った双方向授業、課題のオンライン提出、デジタル教材の即時導入――こうしたインフラと意思決定の速さは、学校ごとに差はあれども、総じて私立校が先行していたと多くの報道が伝えています。

一方、公立校では「プリントだけ取りに来てください」というやり方が長く続いた地域もあり、学びの停滞を心配する保護者の声が広がりました。日本経済新聞は当時、「中学受験熱、コロナで再点火 公立校での教育に不安」と報じ、首都圏の私立・国立中学の受験者が推計5万人を超え、公立中高一貫校も含めれば小学生の約4.8人に1人が受験した計算になると伝えています。

「いざというときに、子どもの学びを止めないでくれる学校に預けたい」
この感覚は、コロナを経験した保護者の心に静かに、しかし深く刻まれました。

公立校の環境変化「子を守るための受験」

中学受験が一般化したことで、もう一つ進んでいる現象があります。学力上位層が中学受験で公立中学から「抜けて」しまうため、地域によっては公立中学の学力分布や雰囲気が、親世代の頃とは異なってきているという指摘です。

雑誌『中央公論』のコラムでも、「コロナ禍が何年続くかわからない不安を募らせる保護者の目に、私立学校が優れて見えた」「難関校でなくてもいいから、私立に入れておいたほうがよさそうだ」という保護者心理が紹介されていました。

トップ校を狙う「攻めの受験」だけでなく、「環境を選ぶための受験」「子どもをのびのびした6年間で見守ってもらうための受験」――いわば「守りの受験」も増えているのが、今の特徴と言えそうです。

大学入試の地殻変動が中学受験まで押し寄せる

センター試験から共通テストへ

2020年度を最後に大学入試センター試験が幕を下ろし、2021年度からは大学入学共通テストがスタートしました。単なる名称変更ではなく、思考力・判断力・表現力を問う方向へと大きく舵が切られています。

数学IAでは令和2年度の平均点が57.68点だったのに対し、令和3年度は37.96点と約20点も下がるなど、難化を実感させる結果も出ています。会話文や資料の読み取りを前提とした出題形式は、暗記中心の対策では太刀打ちしにくく、長文を読み解く体力と、その場で考える力が求められるようになりました。

私立大学の定員厳格化と推薦入試の拡大

文部科学省による私立大学の定員管理厳格化が進み、合格者数が以前ほど大きく出されなくなった結果、一般入試の難易度はじわじわと上がりました。

それと並行して、総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜の割合が拡大し、私立大学では入学者の半数以上が推薦・総合型で決まるケースも当たり前になっています。

Fランク大学への厳しい声

リメディアル教育(大学で中高の内容を教える)など、いわゆる中堅以下の大学への評価の厳しさも報じられるようになり、「どの大学に入るか」が以前にも増して問われる時代になりました。

私立大にも私立補助金として多額の税金が使われているため国としても大学に勉強する気のない人にはお金をださないよという姿勢に切り替わりつつあります。大学全入時代がいつの日か終了するかもしれません。

付属校人気の急上昇

こうした不透明感を背景に、保護者の視線が向かう先のひとつが、早慶やGMARCHといった人気大学の付属校です。Diamond Onlineの教育特集でも、「早慶・GMARCH付属校の難易度はおおむね上昇・高止まり傾向にあり、人気が衰えておらず、2026年度入試も激戦になる」と報じられています。

「自分の子が大学を受ける頃に、制度がまたガラリと変わっていたら……」という不安を、付属校進学という選択肢で和らげようとするご家庭が増えているのです。中学受験の段階で大学までの切符を見据える発想は、20年前にはここまで一般的ではありませんでした。

MARCHの付属でも外部受験を推奨する学校も以前はありましたがいまはどこの付属も推薦枠が拡充されました。推薦枠を保持しながら国公立大に挑戦できるシステムなどが一部残る学校もあるもののMARCH付属に期待されているものは”内部進学”になります。

問題難易度が上昇

かつての応用が、今の基礎

冒頭でも触れたように、首都圏の中堅校で出題される問題が、20年前の最難関校レベルだという指摘は、もはや塾業界では珍しい話ではありません。算数の特殊算ひとつ取っても、ひねりの度合いや設問の長さ、扱われる場面設定の複雑さは、親世代の頃とは比較になりません。

国語では長文の文字数が増え、抽象度の高い評論や、心情の機微を読み取らせる小説が並びます。理科・社会も、知識を覚えれば点が取れる時代から、グラフや資料を読み解いて自分の言葉で考える時代へと移ってきました。

「考えさせる問題」の波及

大学入学共通テストで思考力重視へ舵が切られた以上、中学受験もその影響から逃れられません。中学入試の目的のひとつは、6年後の大学進学を見据えた基礎体力作りでもあります。記述問題、資料読解、教科横断的な出題――こうした傾向は中堅校にまで広がりつつあり、「過去問を解いて型を覚える」だけでは届きにくい山になってきています。

まとめ:景色そのものが変わってしまった

受験率、情報量、家計の構造、学校環境、大学入試制度、そして問題の難易度――どの切り口から見ても、今の中学受験は、親世代が経験したそれとは別の世界の出来事のようです。

「自分のときはこうだった」という記憶が、お子さんを励ます力になることはもちろんあります。けれども同時に、今の子どもたちが向き合っている景色は、親が見てきたものとはずいぶん違うのだということを、頭の片隅に置いておくだけで、伴走の景色は少し優しくなるかもしれません。

机に向かうお子さんの背中は、親世代よりずっと重い荷物を背負っています。その事実を知っていることそのものが、何よりの理解者の証なのだと思います。


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