私立中学進学にかかる費用と家計負担の現実

私立中学進学にかかる費用と家計負担の現実

私立中学に通う家庭の年収状況

中学受験を経て私立中学校へ通わせる家庭の多くは、経済的に余裕があることが多いです。文部科学省の「令和3年度 子供の学習費調査」によると、私立中学に通う生徒の世帯年収は、年収600万円以上の家庭が全体の9割を占め、1000万円以上は6割弱、1200万円以上は4割という結果が出ています。年収1000万円~1199万円の家庭も17.7%と高い割合を占めており、年収1000万円以上の家庭が私立中学においては標準的な層であることがわかります。

私立中学と公立中学の学費の違い

私立中学の学費は、公立中学の約2.7倍かかると言われています。具体的に見ると、私立中学校に通う生徒の1年間の学習費の平均は1,436,353円で、公立中学校の平均538,799円と比べると、私立中学はかなり高額です。3年間で考えると、私立中学の学費は平均で約430万円に達し、公立との差はさらに大きくなります。

内訳を詳しく見ると、学校教育費は公立中学校が年間約13万2千円なのに対し、私立中学では約106万1千円です。この差は約8倍にもなります。一方で、学校外活動費は、公立が約36万8千円、私立が約36万7千円と、あまり変わりはありません。さらに、学習塾などの補助学習費に関しては、公立中学校の生徒が年間約30万3千円、私立中学の生徒は約26万2千円と、公立の方が若干高くなっています。

受験と学習塾の費用

私立中学への進学を目指すためには、受験対策が重要であり、そのために塾通いが欠かせません。塾の授業料だけでなく、教材費や夏期講習・冬期講習といった集中講座の費用もかかります。これらを含めると、家庭の支出はさらに増加します。受験を目指す学年になると、塾の費用は年間で数十万円から100万円以上になることもあります。したがって、私立中学に進学するためには、塾費用を見越した家計計画が必要です。公立中学の方が中学の塾は安く済みますがそこまでにかかっているお金が段違いです。

私立高校の無償化政策と中学受験の影響

2020年からの国の就学支援金制度の改正により、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県では私立高校の実質無償化の対象が拡大されました。これにより、私立高校への進学にかかる経済的ハードルが下がり、中学受験を視野に入れる家庭も増えてきました。特に東京都と神奈川県の私立中高一貫校は、高校からの募集がない学校も多く、中学受験が選ばれる要因となっています。

各地域での無償化制度の詳細

東京都

東京都では年収910万円未満の世帯が私立高校の実質無償化の対象となります。この制度を利用すると、国の支援と併せて年間最大461,000円が支給され、3年間で合計138万3千円となります。これにより、月額約38,400円の助成が受けられます。

私立高校の教育費が月約11万円かかるとすると、支援を差し引いた月約71,600円の家計負担となり、高校時代には何とか対応できると考えられます。ただし、中学生の期間ではこの助成は適用されないため、月に約71,600円の負担に加え、さらに38,400円をどのように捻出するかが課題となります。家計負担を抑えるために、例えば車を手放したり、祖父母の援助を受けたりする必要があるかもしれません。

神奈川県

神奈川県では2020年4月から補助枠を拡大し、年収700万円未満の世帯を対象に私立高校の授業料が実質無償化されました。国の「高等学校等就学支援金」に加えて、県独自の「私立高等学校等生徒学費補助金」を利用することで、年間最大444,000円まで補助されます。さらに、入学金補助として10万円が支給されるため、経済的負担の軽減が図られています。

千葉県と埼玉県

千葉県では、世帯年収に応じた補助制度があり、年収590万円未満の家庭では授業料が無償になります。年収590万円から640万円未満の家庭には授業料の3分の2が助成されます。埼玉県では、授業料や施設費を実質無償にする「授業料軽減補助」があり、年収約720万円未満の世帯が対象です。また、年収609万円以下の世帯には一律10万円の入学補助金も支給されます。

家計への影響とボーダーライン

都内在住で私立校への進学を計画している場合、家計に占める教育費の割合が15%以上になると、経済的に圧迫される可能性があります。一般的な家計の目安として、年収の15%を超える教育費は家計に負担がかかりやすいとされています。私立中学では年間150万円ほどかかることが多いため、世帯年収が1000万円以上の家庭がボーダーラインとなるケースが多いです。

中学受験のための準備と家計負担

中学受験を検討する際には、受験費用や学費だけでなく、進学後の生活費や補習塾費用も見据えることが大切です。学校によっては授業料以外に施設費や寄付金が求められる場合もあるため、家計を圧迫しないよう綿密な計画を立てることが求められます。また、私立中学では学習環境や授業の質が高く、その分生徒が高い教育を受けることが期待できますが、その対価としての負担が重いことも理解しておく必要があります。

結論

私立中学への進学は、充実した教育を受けられる大きなメリットがありますが、そのための費用負担も軽視できません。家計に与える影響を考え、現実的な視点で中学受験の選択を行うことが重要です。無償化制度をうまく活用し、必要に応じて親族の援助を受けるなど、事前にしっかりとした準備を行い、計画的に進めることで、子どもの将来への投資を実現することが可能です。

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個別指導型 中学受験専門塾 INSPIRE ACADEMY

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