中学受験御三家離れの真実─保護者が選ぶ、いま本当に求められている中学校とは


INSPIRE ACADEMY 東京都世田谷区渋谷区 オンライン授業対応可 中学受験特化個別指導予備校



御三家離れの真実──保護者が選ぶ、いま本当に求められている中学校とは


御三家の「一強時代」に変化の兆し

2025年度の首都圏中学受験が終わり、興味深いデータが明らかになりました。開成、麻布、武蔵、桜蔭、女子学院、雙葉──長年「御三家」として君臨してきた6校が、すべて前年より志願者数を減らしたのです。

一方で、教育内容に特色を持つ中堅校は受験者を増やし続けています。これは単なる一時的な現象でしょうか。それとも、中学受験そのものが構造的な変化を迎えているのでしょうか。

保護者の皆さまが知っておくべき最新トレンドと、その背景にある教育観の変化を、確かなデータとともに読み解いていきます。


現状の概況:数字で見る「御三家離れ」と「中堅校人気」

御三家志願者数の推移(2024年度→2025年度)

学校名2024年度2025年度増減
男子御三家
開成1,259人1,234人-44人
麻布826人761人-59人
武蔵546人518人-30人
女子御三家
桜蔭591人542人-49人
女子学院708人706人-2人
雙葉399人389人-1人

出典:産経新聞

塾関係者が「あまり覚えがない」と驚く現象です。首都圏模試センターによると、2025年度の首都圏(1都3県)の受験者総数は約52,300人で、受験率は18.10%と高水準を維持しています。受験する子どもの数そのものは減っていないのに、御三家の志願者だけが減少しているのです。

一方で増加した中堅校の例(産経新聞・Diamond Educateより):

  • 東京農業大学第一中:前年比+249人(倍率14.7倍)
  • 立教池袋:前年比+121人
  • 明大中野:前年比+46人
  • 十文字:前年比+330人
  • 跡見学園:前年比+287人

これらの学校が共通して掲げているのは「グローバル教育」「STEM教育」「探究学習」などのキーワードです。偏差値以外の部分で、保護者と受験生の心をつかんでいることがわかります。

別ブログでも御三家減少を記載しています


御三家の人気はなぜ下がったのか──5つの要因を検証

要因①:大学附属校人気の高まり

四谷大塚・日能研・SAPIXなど大手模試の志望者動向を分析した複数の塾関係者が、「大学附属校への安定志向」を指摘しています。

立教池袋や明大中野などの附属校が大幅に受験者を増やした背景には、大学入試制度の頻繁な変更への不安があります。「中学・高校と落ち着いて学び、大学は内部進学で確保したい」という保護者の心理が強まっているのです。
出典:産経新聞(2025年4月1日)

要因②:教育の多様化と「わが子に合う学校」選び

御三家信仰が消え、偏差値や一般的な人気を重視することが少なくなった。『自分(子供)が学びたいことができる学校かどうか』といった観点で判断すると変化した。

実際に、東京農業大学第一中学校では農業大学と連携した総合学習や実験重視の理科教育が注目され、前年比249人増という大幅増を記録しました。保護者が「偏差値の高さ」よりも「教育内容の充実度」を重視する傾向が鮮明になっています。
出典:産経新聞(2025年4月1日)

要因③:「放任スタイル」への不安──共働き家庭の増加

御三家の一部は「自由」「放任主義」の校風が強く、生徒の自主性を重んじる教育方針で知られています。しかし、共働き世帯が増える中で、「親が子どもの学習管理に割く時間が限られる」ため、「サポートが手厚い進学校」への志向が強まっているという指摘もあります。

要因④:私立高校授業料無償化の影響

東京都では2024年度から私立高校の授業料が実質無償化され、2026年度からは国も所得制限を撤廃する方針です。中高一貫の私立校に進学した場合、中学3年間の学費負担のみとなることから、経済的なハードルが下がり、「御三家でなくても良い選択肢がある」という意識が広がっています。

要因⑤:塾の併願指導と模試分析の影響

四大模試(SAPIX・四谷大塚・日能研・首都圏模試センター)の2024年10月実施分の志望者動向分析では、麻布・武蔵・桜蔭・雙葉の志願者が減少していることが確認されました。森上教育研究所の森上展安代表は、「チャレンジ受験の学力層が減っている」と指摘しています。

つまり、塾が安全志向の併願指導を強化した結果、「御三家にチャレンジするよりも、確実に合格できる学校を選ぼう」という受験生が増えた可能性があります。
出典:Diamond Online(2024年4月)、朝日新聞Edua記事


御三家のレベルは落ちていない──変わったのは「志願者層」

誤解してはいけないのは、御三家の教育レベルや入試難易度が下がったわけではないという点です。

桜蔭中学校の2025年度東京大学合格者数は52名(卒業生223名中)と、依然として女子校トップクラスの進学実績を維持しています。開成も東大・京大合格者数で圧倒的な強さを誇り、入試問題の難度も高水準です。

易化したというよりチャレンジ受験の学力層が減っていることが 志望者数の根源です。つまり、志願者数は減ったが、受験する層のレベルは高いままなのです。偏差値・合格ラインともに大きく変動していないことがこれを裏付けています。

結論:御三家は相変わらず最難関。ただし「志望する家庭の価値観」が変化している。


2月1日集中入試が与える影響──御三家は「一度きりのチャンス」

首都圏の中学受験では、東京・神奈川の私立中学校の多くが2月1日に入試を実施します。特に御三家は全校が2月1日午前のみの試験日程で、複数回受験ができません。

午後入試の普及が変えた併願戦略

約20年前に導入された「午後入試」により、受験生は2月1日に午前と午後の2校を受験できるようになりました。2月1日午前の入試を受けた受験生の約7割が午後に別の学校を受験しています。

しかし御三家は午後入試を実施していません。

つまり、御三家を受験する場合、2月1日は「午前の1校のみ」となり、午後入試で他校と併願することができないのです。この制約が、「御三家にチャレンジするよりも、2月1日午前は中堅の第一志望校、午後は安全校で合格を確保しよう」という戦略を選ぶ家庭を増やしていると考えられます。

当然御三家どうしの併願もできません。開成はチャレンジ校だが麻布なら十分狙えるという子も両方受けるということはできない、また御三家どこかには行けるという受験戦略も取れないため御三家の受験者数は増えないのです。


御三家チャレンジのリスク vs 中堅確実合格の選択

家庭がリスクを回避する理由

「なぜ御三家にチャレンジしないのか?」──この問いに対する答えは、保護者の価値観の変化にあります。

①教育費負担の現実

首都圏の大手塾では、小学6年生の1年間で年間110万〜125万円の費用がかかります。さらに受験料(平均2.4万円×8校=約20万円)、入学金(平均26万円)を合わせると、受験シーズンだけで30〜50万円を超える支出が発生します。

2023年の国民生活基礎調査によると、児童が二人いる家庭の平均年収は860万円。年収の2割以上が受験費用に消えることになり、「確実に合格できる学校で、教育内容も充実している中堅校のほうが良い」と考える家庭が増えているのです。

②通学時間と子どもの負担

都心の御三家に通うには、郊外から片道1時間以上かかる家庭も少なくありません。思春期の6年間を通学に費やすよりも、「近隣の中堅校で、部活動や探究学習に時間を使ってほしい」という保護者の声もあります。

③「校風が合うか」の重視

御三家の自由な校風は魅力的ですが、「自己管理ができない子には向かない」という懸念もあります。最近では学校見学やオープンキャンパスを複数回訪れ、子ども自身が「ここで学びたい」と感じた学校を選ぶ家庭が増えています。

偏差値で学校を決めず、校風優先で最終的な入学先を選ぶ受験生も増えているのが現状です。


模試の出願傾向から見た今年度の見通し

2024年10月実施の四大模試(SAPIX・四谷大塚・日能研・首都圏模試センター)の志望者動向データを分析すると、以下の傾向が確認できます。

主要模試の志望者数推移(例:桜蔭)

  • SAPIXサピックスオープン:前年比-22人(約7%減)
  • 四谷大塚合不合判定テスト:微増

日経新聞の報道によると、桜蔭の志望者はSAPIXで281人(前年比-22人、7%減)となりました。一方、四谷大塚では微増しており、模試によって傾向が異なります。

今後の見通し(予測の不確実性を含む):

一部2026年度入試では、再び難関校回帰が起きる可能性も指摘されていますが、予断を許しません。

また、2026年2月1日は日曜日にあたり、女子学院が試験日を2月2日に変更する「サンデーショック」が発生します。これにより女子御三家の併願が可能になるため、2026年度は志願動向が大きく変動する可能性があります。

**予測の限界:**模試の志望者数は出願時には変動するため、確定的な予測は困難です。

出典:日本経済新聞(2025年12月)、朝日新聞Edua記事


親・受験生が今すべき実務的示唆

併願戦略の立て方

御三家を目指すか、中堅校を第一志望にするか──この判断は、単に偏差値だけで決めるべきではありません。以下のポイントを家族で話し合ってください。

①子ども自身の適性と希望を最優先する
学校見学やオープンキャンパスで、子どもが「ここで学びたい」と感じた学校を重視しましょう。偏差値が高くても、校風が合わなければ6年間は苦痛になります。

②2月1日午前・午後の組み合わせを戦略的に考える
御三家は午前のみのため、午後入試を活用できません。「2月1日午前は第一志望の中堅校、午後は安全校」という戦略も有効です。塾の先生と相談し、複数のシミュレーションを行いましょう。

③1月の埼玉・千葉受験で「勢い」をつける
首都圏の受験生の多くが、1月に埼玉や千葉の学校を「腕試し」または「安全校」として受験します。早めに合格を確保することで、2月の本命校に落ち着いて臨めます。

④教育内容を徹底的に調べる
グローバル教育、STEM教育、探究学習など、各校の教育プログラムを比較しましょう。パンフレットだけでなく、在校生や卒業生の声を聞くことも重要です。

⑤経済的な負担を現実的に試算する
中学3年間+高校3年間の学費、通学費、塾・予備校費用を総合的に試算しましょう。無理な受験は家計を圧迫し、子どもにも負担をかけます。


まとめ:偏差値だけでない「最適な学校選び」の時代へ

御三家の志願者減少は、「御三家のレベルが落ちた」のではなく、保護者と受験生の価値観が多様化した結果です。

  • 大学附属校の安定志向
  • 教育内容の充実度を重視する傾向
  • 共働き家庭の増加による「手厚いサポート」へのニーズ
  • 私立高校授業料無償化による経済的ハードルの低下
  • 2月1日集中入試による併願制約

これらの要因が重なり、「御三家一強時代」から「多様な選択肢の時代」へと変化しています。

今後の注視点:

  1. 2026年のサンデーショック:女子学院の試験日変更により、女子御三家併願が可能に。志願動向が大きく変わる可能性があります。
  2. 中堅校の偏差値上昇:人気が高まれば偏差値も上昇し、「中堅校」と呼べなくなる学校も出てくるでしょう。
  3. 大学入試改革の行方:制度が安定すれば、再び難関進学校への回帰が起きる可能性もあります。

保護者の皆さまには、「世間の評判」や「偏差値ランキング」に惑わされず、わが子にとって最適な学びの場はどこかを、家族でじっくり話し合っていただきたいと思います。



参考文献・出典一覧

  1. 産経新聞「開成、桜蔭など「御三家」すべてが受験者減」(2025年4月1日)
  2. Diamond Online「首都圏中学受験率が過去最高!中堅校人気で受験率が過去最高を更新」(2024年4月)
  3. 日本経済新聞「模試に見る中学受験動向 桜蔭・麻布が志望者減らす」(2025年12月)

※本記事は2025年度入試までのデータに基づいています。最新の志望校情報は各学校の公式サイトおよび塾の進路相談でご確認ください。

中学受験を徹底サポート:INSPIRE ACADEMYへのお問い合わせはこちら

お電話でのお問い合わせについては授業中で応答でき兼ねる場合が御座いますので、LINEからのお問い合わせがスムーズです。

 LINEで問い合わせ

〒155-0031 東京都世田谷区北沢3-1-2 みなとビル2階
10時~22時

 お問い合わせフォームはこちら

お電話でのお問い合わせはこちら
TEL : 03-6407-0548

この記事を書いた人

個別指導型 中学受験専門塾 INSPIRE ACADEMY

個別指導型 中学受験専門塾 INSPIRE ACADEMY

個別指導型の中学受験専門塾 INSPIRE ACADEMYでは、小学生の日々の学習習慣付けから最難関水準の中学受験まで個別指導形式でサポート致します。
世田谷、渋谷(下北沢、代々木上原、東北沢、駒場、笹塚、三軒茶屋)近隣で中学受験塾をお探しの方は、合格実績豊富な当塾までご相談くださいませ。