「個別指導も、つけたほうがいいんでしょうか」
面談でいちばん多いご質問かもしれません。そして、いちばん答えにくいご質問でもあります。つけたほうがいい場合とそうでない場合が、はっきり分かれるからです。また私たちの業務上ポジショニングトークに映ってしまうため、なおさらフラットに受け取ってもらいづらくなります。
今回は併用について、判断の目安から費用、塾への伝え方まで、実際にご相談を受けている立場からお話しします。「まだ必要ない」と申し上げることもあるので、そのつもりでお読みください。
そもそも、なぜ中学受験で塾を併用する人がいるのか
SAPIX、日能研、四谷大塚、早稲アカ、グノーブル。どの塾もカリキュラムはよくできています。それでも併用が生まれるのは、集団塾が「授業をする場所」であって「その子の家庭学習を見る場所」ではないからです。
週に3回4回と授業があり、そのたびに宿題が出る。復習テストがあり、月次のテストでクラスが動く。この回転に乗れているうちは何の問題もありません。
乗れなくなったときに、集団塾は止まってくれません。次の単元へ進みます。置いていかれた分は、家庭で埋めるしかない。ここを家庭だけで背負えるかどうかが、併用するかどうかの分かれ目です。
併用を考えたほうがいいサイン
次のうち2つ以上当てはまるなら、一度検討する価値があります。
宿題が終わらないまま次の週になっている。これがいちばん分かりやすいサインです。1週間でも積み残すと、翌週はさらに苦しくなります。
特定の科目だけ、明らかに足を引っ張っている。4科目のうち算数だけが偏差値10以上低い、といった状態です。集団授業は全体に合わせて進むので、1科目だけの穴は埋まりません。
親が教えると、必ず険悪になる。これは能力の問題ではありません。親子だと甘えも出ますし、感情も入ります。ご家庭の空気が悪くなるくらいなら、外に出したほうがいいです。
質問ができないまま帰ってくる。「先生に聞いてきなさい」と言っても聞けない。人見知りのお子様や、そもそも何が分からないか言語化できないお子様に多いパターンです。
クラスが下がって、本人の気持ちが折れている。学力より先に意欲が落ちると、戻すのに時間がかかります。ここは早めに手を打ったほうがいい場面です。
逆にまだ必要ないケース
正直に書きます。次のような場合は、お金と時間を使うわりに効果が出にくいです。
まだ入塾して2、3か月のとき。新しい環境に慣れるまでには時間がかかります。この時期の成績はあてになりません。
宿題はこなせていて、ただ成績が思ったほど伸びないとき。回せているなら、まだ集団塾のなかで解決できる可能性があります。まず塾の先生に相談してください。
お子様本人が「増やしたくない」と強く言っているとき。納得のないまま授業を足しても、座っているだけになります。本人が困っている実感を持つまで待ったほうが、結果的に早いことがあります。
当塾でも、お話をうかがったうえで「今はまだ様子を見ましょう」とお伝えすることがあります。増やせば伸びる、というものではありません。
いつ始めるのがいいのか
学年ごとに、事情が変わります。
4年生
この時期に併用が必要になるケースは多くありません。ただし「勉強のやり方そのものが身についていない」場合は例外です。ノートの書き方、丸つけの仕方、直しの残し方。ここを4年生のうちに整えておくと、5年生以降がまるで違います。
5年生
いちばん相談が多いのがここです。とくに5年生の夏以降、算数の難易度が一段上がります。比、割合、速さ、場合の数。ここで詰まると、6年生でも同じ場所で止まり続けます。
5年生のうちに手を打てたご家庭は、6年生がかなり楽になります。併用を始めるタイミングとしては、5年生の夏から秋が最も費用対効果が高いと感じています。
6年生の前半
まだ間に合います。ただし目的を絞ってください。「全体的に底上げ」は、この時期には時間が足りません。1科目、あるいは1単元に絞るほうが結果が出ます。
6年生の後半
9月以降は志望校別の特訓が始まり、スケジュールが一気に埋まります。この時期の併用は「弱点補強」ではなく「過去問の使い方と、やることの取捨選択」が中心になります。何を捨てるかを一緒に決める作業です。ここは経験のある第三者がいたほうが判断しやすい場面です。
週に何コマが適正か
多くのご家庭が最初に迷うところです。結論から言うと、まずは週1コマで十分です。
理由は単純で、集団塾の授業と宿題だけでもすでに時間が埋まっているからです。そこに週2コマ3コマと足すと、今度は個別指導の宿題まで積み上がって、どちらも中途半端になります。
よくあるのがこのパターンです。集団塾で理解しきれなかった箇所を週1回持ち込んで解消する。それだけでも、翌週の授業の聞こえ方が変わります。
6年生の後半で、志望校の過去問対策に本格的に入る段階になったら、そこで週2コマに増やす。この順番がおすすめです。最初から多くしないでください。
通っている塾に伝えるべきか
これもよく聞かれます。
伝えなくても問題はありません。ただ、伝えたほうがうまくいく場面はあります。
たとえば集団塾の先生から見て「最近伸びたな」という変化があったとき、その理由が分かっていれば指導も合わせやすくなります。逆に黙っていると、塾側が原因を読み違えることもあります。
気にされるのは「嫌な顔をされないか」という点だと思います。実際のところ、併用しているご家庭は珍しくありません。集団塾の先生方もそれは分かっています。
言い方としては、「算数だけ家で見きれなくなったので、外で見てもらうことにしました」くらいで十分です。塾を否定する言い方さえ避ければ、まず問題になりません。
費用はどう考えるか
中学受験は、集団塾だけでもすでに大きな負担です。そこに個別指導を足すとなると、当然ためらいます。
考え方として、ひとつご提案があります。「足す」のではなく「組み替える」という発想です。
集団塾のオプション講座をすべて取っているご家庭は少なくありません。そのなかには、お子様の現状に合っていないものも混ざっています。合っていない講座を1つ外して、その分を個別に回す。これなら総額は変わりません。
当塾では、この見直し自体もご相談に乗っています。何を残して何を外すか、現状の成績を見ながら一緒に考えます。結果として「外さなくていいです」となることもあります。
個別指導の選び方で、見るべきところ
併用する場合、どの個別指導を選ぶかで結果が変わります。見るべき点を3つ挙げます。
通っている塾の教材で進めてもらえるか
ここがいちばん重要です。個別指導側が独自の教材を使うと、お子様は2つのカリキュラムを同時に走らせることになります。これは確実にパンクします。集団塾のテキストをそのまま持ち込めるかどうかを、必ず確認してください。
中学受験の内容を分かっている講師か
中学受験の算数は、方程式を使わずに特殊算で解きます。大学生のアルバイト講師が方程式で教えてしまうと、塾の授業と噛み合わなくなります。「中学受験専門かどうか」は、大学受験や高校受験も扱う個別指導とは決定的に違う点です。
移動時間が現実的か
見落とされがちですが、大きな問題です。集団塾に電車で通ったあと、さらに別の場所へ移動する。6年生の後半にこれは続きません。オンラインで受けられるかどうかは、続けられるかどうかに直結します。
当塾での併用サポートについて
INSPIRE ACADEMYは、大手塾に通いながら併用されているお子様を多くお預かりしています。
転塾をおすすめすることは、ほとんどありません。SAPIXにも日能研にも四谷大塚にもグノーブルにも、それぞれ良いところがあります。そこを崩す理由は普通ありません。
私たちがやっているのは、通われている塾のテキストを使って、その週に必要なことを整理する作業です。全部やろうとして全部中途半端になるのを防ぐのが、いちばんの役割かもしれません。
教室は小田急線の東北沢駅から徒歩1分ですが、オンラインにも対応しています。塾帰りにもう一度移動する必要はありません。
まとめ
併用を考えるべきかどうかは、成績の数字より「宿題が回っているかどうか」で判断してください。回っていないなら、放置しても改善しません。
始めるなら5年生の夏から秋。週1コマから。集団塾の教材を持ち込めるところを選ぶ。この3つを押さえれば、大きく外すことはありません。
そして繰り返しになりますが、今はまだ必要ない、というご家庭もあります。その場合はそうお伝えします。まずは現状をお聞かせいただければ、必要かどうかからご一緒に考えます。
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