中学受験のストレスについて 保護者を対象にした調査はいくつもあります。
ある調査では 中学受験を経験した保護者のおよそ7割がストレスを感じたことがあると答え そのピークは小学6年生の2学期でした。最も多い原因は子どもの成績や合否への不安で 43%を占めています。
では子ども自身は何をつらいと感じているのか。これについては ほとんど語られていません。
今回は 当塾に通う6年生たちが日ごろ口にしていることをまとめました。読んでいて耳が痛いところがあるかもしれません。ただ ここに書いたことを知っているだけで 声のかけ方は変わると思います。
この記事は 授業中の会話の流れで自然に出てきた言葉をまとめたものです。あらたまった聞き取りはしていません。受験期の子どもに余計な負担をかけないことを最優先にしています。個人が特定されないよう 細部は変えています。なお筆者自身も中学受験の経験者です。
とにかく眠い
いちばん多く出てくるのが これです。
週に4日も5日も塾があり 帰宅は夜遅く。そこから宿題をして 寝るのは日付が変わってから。朝は普通に起きて学校へ行きます。
学校の先生からも 受験をする子は毎朝眠そうに登校してくるという話が出ています。
「授業中に寝ちゃって 先生に怒られた。でも どうしても目が開かない」
本人はサボっているつもりがありません。それなのに怒られる。努力しているのに責められるという状況が いちばん心を削ります。
クラスが下がった日の 家の空気
テストの結果でクラスが変わる塾に通っていると 結果が出る日が一番緊張します。
ただ 子どもたちが気にしているのはクラスそのものではありません。
「クラスが下がるのはいいんだけど お母さんが何も言わなくなるのがこわい」
怒られるよりも 黙られるほうがつらい。この話は本当によく出ます。
保護者からすれば 感情的にならないよう気をつけて 言葉を選んでいる時間かもしれません。けれど子どもには「がっかりされた」としか伝わっていないことがあります。
頑張ってるねと言われるのがしんどい
これは意外に思われるかもしれません。
「頑張ってるねって言われると まだ頑張れって言われてる気がする」
励ましのつもりの言葉が 期待の上乗せとして受け取られています。とくに成績が伸びていない時期にこの傾向が強く出ます。
頑張っている自覚はある。それでも結果が出ていない。そこに頑張っているねと言われると 逃げ場がなくなるのだと思います。
学校の話についていけない
受験をしない友達との距離を気にしている子は多いです。
「休み時間に昨日のゲームの話をしてて 自分だけ分からない」
勉強がつらいというよりみんなと同じ時間を過ごせていないことがつらい。この感覚は大人が思うより深いようです。
一方で 学校を息抜きの場だと感じている子も多くいます。塾と家では受験の話しかできないぶん 学校が唯一ゆるめる場所になっている。学校は勉強の邪魔だと大人が言い切ってしまうと この逃げ場まで奪うことになります。
宿題が どうやっても終わらない
6年生になると 塾の宿題の量が一段と増えます。学校の宿題まで手が回らず 保護者が学校に配慮を求めるケースもあると報じられています。
「全部やろうとすると寝る時間がなくて 適当にやると怒られる」
この板挟みは 子どもには解けません。何を削っていいかを判断できるのは大人だけだからです。
全部やるのが正しいと思い込んだまま量に潰されている子は 毎年います。優先順位をつけてあげるだけで 表情が変わることがあります。
下の子に我慢させている気がする
きょうだいがいる家庭で ときどき出てくる話です。
「自分のせいで 妹が出かけられなくなってる」
家族が自分中心に動いていることを 子どもはちゃんと分かっています。そしてそれを申し訳なさとして抱えている。この気持ちは 落ちたらどうしようという不安と直接つながっています。
落ちたらどうなるんだろう
秋が深まると この話が増えます。
「落ちたら いままでのお金とか 全部むだになるのかな」
小学6年生が 家庭の出費を気にしています。誰かに言われたわけではなく 会話の断片から感じ取っているようです。
受験の結果と 自分の価値を重ねてしまっている状態です。ここは大人がはっきり切り離してあげる必要があります。
共通していること
並べてみて気づくことがあります。
子どもたちは 勉強そのものをつらいとはあまり言いません。算数が難しい 理科が覚えられない という話は出てきますが それは困りごとであって つらさとしては語られない。
つらいと言われるのは 眠れないこと 親の表情 友達との距離 家族への申し訳なさ。ほとんどが人との関係についてです。勉強の量ではなく その周りにあるものが子どもを消耗させています。
保護者にできること
結果が悪かったとき 黙らない。言葉を選ぶために黙るのは自然なことですが 子どもには沈黙が最も強い否定として届きます。「そっか」の一言だけでも 受け止めてもらえたことが伝わります。
頑張っているねの代わりに 事実を言う。「昨日も12時までやってたね」のように 見ていたことをそのまま伝える。評価ではなく観察のほうが 子どもは楽に受け取れます。
受験と本人の価値を 言葉で切り離す。落ちても関係ないと 一度はっきり言っておいてください。分かっているだろうと思っていても 伝わっていないことがあります。
削っていいものを 大人が決める。宿題が終わらないのは 本人の要領の問題とは限りません。量が合っていないなら 減らす判断をしてあげてください。
塾にできること
私たちが個別指導にこだわっている理由のひとつが ここにあります。
集団の教室では こうした言葉はまず出てきません。1対1で問題を解いている途中に ふと漏れるものです。手が止まった理由が 算数ではなく昨日の家の空気だった という日もあります。
当塾では そういう日は無理に進めません。宿題の量を調整したり その週の優先順位を組み直したりします。受験は2月まで続きます。途中で折れないことのほうが 1週間分の進度より大事です。
さいごに
保護者の7割がストレスを感じ そのピークが6年生の2学期だという調査があります。同じ時期に 子どもも同じだけ張りつめています。
そして子どもは たいてい何も言いません。心配をかけたくないからです。
ここに書いた言葉のどれかに心当たりがあったなら それだけで十分だと思います。気づいている大人が一人いるだけで 子どもはかなり楽になります。
お子様の様子が気になったら
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