小5の秋。夏休みにあれだけ勉強させたのに、模試の偏差値は50のまま動かない。周りの子は上がっているように見える。このまま6年生になって、本当に第一志望に届くのか。
結論から書きます。小5の秋の偏差値は、合否の予測材料としてはほとんど使えません。使えないというのは「気にしなくていい」という慰めではなく、この時期の数字は入試本番の結果とほとんど相関しないという意味です。だからこそ、いま見るべきものは偏差値ではありません。
この記事の要点
小5秋の偏差値50から、御三家を除く難関校(偏差値60前後)は十分に射程内
ただし「同じ偏差値50」の中身が子によって全く違うため、数字だけでは判断できない
志望校の現実的な見直しが必要になるのは小6の9月、それより前の判断は早すぎる
残り時間は思っているより長い
小5の10月から入試本番までは、約15か月あります。これは中学受験の学習期間全体のうち、およそ半分にあたります。小4から始めた子であれば、残り時間は「これまでやってきた期間と同じくらい」です。
しかも、その15か月は均質ではありません。伸びが集中する時期がはっきりしています。
図1 小5秋から入試までの15か月
計算と基本解法
単元の総合化
総復習
得点力に変換
1〜2月
偏差値が最も大きく動くのは小6の夏から秋。小5の秋は、その伸びを支える土台をつくる時期にあたる。
小6の夏に成績が急に伸びる子がいます。あれは夏に頑張ったからではなく、それまでに積んだ基礎が、夏の総復習で一気につながるからです。逆に、小5のうちに基礎が抜けたままだと、夏にいくら量をこなしても「つながる材料」がないため伸びません。
つまり小5の秋にやるべきことは、偏差値を上げることではなく、小6夏に伸びるための材料を揃えることです。
偏差値帯ごとの現在地
小5秋の偏差値から見た、現実的な射程と、いま最優先すべきことを整理します。偏差値はサピックス・四谷大塚・日能研で基準が違うため、ここでは四谷大塚(合不合)の水準を目安にしています。サピックスの偏差値であれば、おおよそプラス8〜10して読んでください。
| 小5秋の偏差値 | 現実的な射程 | いま最優先すること |
|---|---|---|
| 60以上 | 御三家を含む最上位層が射程。ただし小5で60台の子が小6で50台に落ちる例は珍しくない | 難問に手を広げず、標準問題の取りこぼしをゼロにする |
| 55前後 | 難関校(偏差値60前後)が十分に射程。最上位校も小6の伸び方次第で届く | 算数の苦手単元をひとつずつ潰す。図形と割合が最優先 |
| 50前後 | 偏差値60前後の難関校が射程内。この層から上位校に届く子が最も多い | 計算ミスの根絶と、基本解法の定着。新しい教材を増やさない |
| 45前後 | 偏差値55前後まで十分に上げられる。難関校も算数が伸びれば可能性は残る | 塾のカリキュラムを追うのをやめ、小4範囲の穴に戻る |
| 40前後 | 偏差値50台前半が現実的な目標。ここから跳ねる子もいるが、まず土台が必要 | 四則計算と分数小数。算数の授業についていけているかの確認 |
どの帯を見ても、「最優先すること」に新しい教材や演習量の追加は出てきません。小5秋の課題は、ほぼすべてが「すでにやったことの穴」にあります。
偏差値が上がらない本当の理由
保護者からよく聞くのが「夏休み、あれだけやったのに偏差値が変わらない」という言葉です。ここに大きな誤解があります。
偏差値は、集団の中での相対的な位置を示す数字です。本人の実力が伸びても、同じ集団の他の子も同じだけ伸びていれば、偏差値は動きません。小5の秋から小6にかけては、受験する家庭が本格的に動き出す時期で、集団全体の学力が急速に上がります。
図2 偏差値が同じでも中身は違う
小5春 偏差値50
小5秋 偏差値50(同じ数字)
半年で本人の学力は確かに伸びている。しかし集団も伸びているため、偏差値という相対値は動かない。停滞に見えて、実際には前進している。
偏差値が横ばいということは、集団の伸びと同じ速度で伸びているということです。下がっていないなら、努力は結果になっています。逆に、偏差値が横ばいで「何も伸びていない」と判断して塾を変えたり教材を増やしたりすると、積み上げてきたものが途切れます。
見るべきは偏差値ではなく、答案です。前回できなかった問題が今回できているか。計算ミスの本数が減っているか。ここに変化があれば、順調です。
小6で伸びる子の3つの条件
小5秋の時点で偏差値が同じ50の子が2人いても、1年後には55の子と65の子に分かれます。その差を生むものは、才能ではなく次の3点です。
1 計算で点を落とさない
小6の難関校対策では、解法を知っているかどうかより、正確に処理できるかどうかで差がつきます。計算ミスが1回のテストで3問以上出る状態なら、応用問題に進む前にここを直したほうが早く伸びます。地味ですが、最も効きます。
2 間違い直しを自分でやっている
保護者が解説を読み上げて終わりにしている家庭は、小6で止まります。自分で解き直して、自分の手でもう一度正解までたどり着く。この作業を1問でもやっている子は、小6の夏に一気に伸びます。量は関係ありません。やり方の問題です。
3 やることが絞られている
塾のテキスト、宿題、市販の問題集、過去のテスト。これらを全部こなそうとしている子は、どれも中途半端になります。小5秋は「やらないものを決める」時期です。捨てる判断は、家庭だけでは難しく、第三者の目が必要になります。
小5の秋にやってはいけないこと
焦りから起こる判断で、その後1年を無駄にするケースがあります。よく見る4つを挙げます。
教材を追加する 偏差値が動かないと、新しい問題集を買いたくなります。しかし原因はほとんどの場合「やった問題が定着していない」ことなので、追加すると定着率がさらに下がります。
志望校を下げる 小5秋の数字で志望校を下げると、本人のモチベーションが先に落ちます。この時期の偏差値は判断材料になりません。下げる判断は小6の9月以降で間に合います。
塾を変える カリキュラムが途切れ、抜けが増えます。変えるなら小5の夏までか、小6の4月。秋は最も避けたい時期です。授業についていけていないなら、転塾ではなく個別での補強が現実的です。
睡眠時間を削る 小学生は睡眠を削ると学習効率が落ちます。7時間を下回る生活が続いているなら、勉強量ではなく配分の問題です。
判断が必要になる時期
では、いつになったら志望校を現実的に見直すべきか。小6の9月です。
小6の9月からは合不合判定テストや志望校別の模試が始まり、この結果は本番との相関がはっきり出ます。過去問にも取り組み始めているため、志望校の問題との相性も見えます。この2つが揃って初めて、判断材料になります。
小5の秋から小6の8月までの約11か月は、判断する時期ではなく、選択肢を広げる時期です。この期間にどれだけ土台を厚くできたかで、9月に見える景色が変わります。
INSPIRE ACADEMYでの小5秋のサポート
当塾は個別指導型の中学受験専門塾です。小5秋のご相談で最も多いのが「塾の宿題が終わらない」「偏差値が半年動いていない」の2つで、対応はほぼ共通しています。
まず直近の模試の答案とテキストを拝見し、失点を「知らなかった」「知っていたが処理でミスした」「時間が足りなかった」の3つに分けます。この3つは対処が全く違うため、混ぜたままでは手が打てません。そのうえで、やる教材とやらない教材を決めます。多くの場合、量は増えるのではなく減ります。
大手塾に通いながらの併用も歓迎しています。サピックス・四谷大塚・日能研・早稲田アカデミーそれぞれのカリキュラムの進度を把握しているため、塾の授業と重複しない形で、算数の穴だけを埋める使い方ができます。
まとめ
小5の秋に偏差値50なら、偏差値60前後の難関校は十分に射程内です。この層から上位校に届く子が最も多いという事実は、多くの保護者に知られていません。
残り15か月のうち、最も伸びるのは小6の夏です。その伸びを支えるのは、小5の秋に積んだ計算の正確さと基本解法の定着です。いま偏差値が動いていないことは、問題ではありません。答案の中身が変わっていないことが問題です。
判断は小6の9月で間に合います。それまでの11か月は、選択肢を広げることに使ってください。