「比の問題になると急に解けなくなる」。割合までは何とかついてきたのに、比が入ると式がばらばらになる。答案を見ると、比の数と実際の金額や人数を、同じ式の中で足したり引いたりしていることが多い。
比の問題でつまずく原因の多くは、計算力ではありません。比の世界の数と、実際の数の区別がついていないことです。この記事では、答案のどこでその混同が起きているかを見分ける方法と、家庭で直せる手順を、自作の例題で説明します。
例題は本記事のための自作です。実際の入試問題ではありません。
比の数と実際の数を混ぜる典型的な答案
まず、よくある間違いを一つ見てみましょう。
よくある誤答 5-200=3+200 としてしまい、式が成り立たずに手が止まる
この答案では、比の「5」と実際の「200円」が同じ式に並んでいます。5は5円ではありません。兄の所持金を5つ分としたときの「つ分」の数です。単位の違う数を同じ式で足し引きしているので、式が意味を持たない。
正しくは、比の世界だけで考えます。合計は5+3=8つ分で、やりとりしても合計は変わりません。等しくなったとき、2人はそれぞれ4つ分ずつ持っている。兄は5つ分から4つ分に減ったので、わたした200円が1つ分にあたります。兄ははじめに200×5=1000円です。
比の問題を3つの段階に分ける
比の問題は、次の三つの段階で考えると混同が起きにくくなります。
2 1つ分の大きさを求める 実際の数が分かっている部分と、比の数をつなぐ
3 実際の数にもどす 1つ分に比の数をかけて答えを出す
例題1でいえば、合計8、それぞれ4、兄は1つ分減った、までが一つ目の段階です。わたした200円と1つ分をつなぐのが二つ目、200×5で1000円を出すのが三つ目になる。
つまずく子は、一つ目の段階を飛ばして、いきなり実際の数を式に入れようとします。比の世界で関係を言葉にできれば、計算そのものは難しくありません。
答案から混同を見つける方法
保護者の方が丸付けをするときは、答えが合っているかより先に、式の中の数の単位を見てください。
一つの式の中に、比の数と円や人数が混ざっていないか。混ざっていたら、その式で止まっています。答えが合っていても、たまたま数字の組み合わせがうまくいっただけのことがある。
もう一つの見分け方は、本人に「この5は何の5?」と聞くことです。「5円」と答えたら、比の数の意味がまだ入っていない。「兄の分を5つに分けたときの5つ分」と言えれば、比の世界で考えられています。
式の書き方にも、混同の手がかりがあります。比の数には「つ分」や丸をつけ、実際の数には「円」や「人」を必ず書く、というルールを決めてみてください。単位を書く習慣がつくと、5と200円を同じ式に並べたとき、本人が自分で違和感に気づけるようになります。最初は面倒がりますが、2週間ほど続けると、式の途中で手が止まる回数ははっきり減ります。テストの答案でも、単位を書いた式は採点者に考え方が伝わりやすく、途中点にもつながります。
比の合わせ方でつまずく子
比が二つ出てくる問題も、小5でよくつまずく単元です。
ここで「2:3:5」と書いてしまう子が多い。Bが3と4で、同じものを違う数で表しているのに、そろえずに並べています。
Bを3と4の最小公倍数の12にそろえます。A:Bは両方を4倍して8:12、B:Cは両方を3倍して12:15。よってA:B:C=8:12:15です。
この間違いも、根は例題1と同じだ。比の数は、何を1つ分とするかで変わる。Bの1つ分が二つの比で違う大きさなので、そのままでは並べられない。そろえる理由を言葉で説明できるかを確かめてください。
家庭でできる練習の順番
比が苦手な子に、いきなり文章題を何問も解かせるのは逆効果です。次の順で進めてください。
最初は、線分図を必ずかかせます。兄の5つ分、弟の3つ分を、同じ長さの目もりで並べる。図があると、比の数が「目もりの数」だと目で分かります。
次に、図の目もりだけで関係を書く練習をします。合計は何目もりか、差は何目もりか。この段階では、円や人数を一切書かせません。
最後に、実際の数が分かっている部分を一つだけ図に書き込み、1目もりの大きさを出す。ここで初めて実際の数が登場します。三つの段階を、図の上で順番に通る練習です。
1日に解く問題は3問で十分です。同じ型を3日続けて、図をかかずに説明できるようになったら、次の型に進みましょう。割合が不安な場合は、先に「もとにする量」の見つけ方を確認しておくと、比への移り方が楽になります。
比の問題で親がやりがちな教え方
子どもが比で止まると、保護者の方がつい「兄が1つ分減ったから、200円が1つ分」と答えの筋道を先に言ってしまうことがある。その場では解けても、次の問題で同じところで止まる。手順は覚えても、なぜそこが1つ分になるのかが本人の中に残っていないからだ。
聞き方を変えるだけで、結果は変わる。「兄と弟で、全部で何つ分?」「そのうち、円が分かっているのはどこ?」と、段階ごとに一つずつ聞く。答えを言うのではなく、次に見る場所を指さす役に回る。
比を分数や小数に直して解かせるのも、この時期は避けたい。5:3を「兄は弟の3分の5倍」と言いかえる方法は、慣れた子には便利だが、比の数の意味があいまいな子には混乱の元になる。まずは整数の比のまま、線分図の目もりで考える癖をつける。分数への言いかえは、そのあとで十分に間に合う。
比の考え方が使われる単元
比は単独の単元で終わりません。速さ、食塩水の濃度、平面図形の相似、仕事算など、小6で扱う多くの単元で使われます。
たとえば速さでは、同じ道のりを進むとき、速さの比と時間の比が逆になる。食塩水では、てんびん図の腕の長さと食塩水の重さが逆比になります。どれも、比の世界で関係を整理してから実際の数にもどす、という同じ手順で解けます。
小5のうちに比の三つの段階が身に付いていれば、小6の応用問題でも同じ考え方が使える。逆に、ここを曖昧にしたまま進むと、単元が変わるたびに同じつまずきを繰り返します。濃度の問題は食塩水の濃度はてんびん図でどう解くかでも扱っています。
比のつまずきを一緒に確かめる個別指導
家庭で答案を見ても、どの段階で止まっているのか判断がつかないことがあります。図はかけているのに式で混ざるのか、そもそも1つ分の意味が分かっていないのか。本人に説明してもらわないと見えない部分です。
INSPIRE ACADEMYは、中学受験の個別指導塾です。算数の授業では、お子さまに線分図をかいてもらいながら、どこで比の数と実際の数が混ざるかを確かめます。止まる段階が分かれば、練習は一つに絞れます。
比の問題で手が止まる答案があれば、そのままお持ちください。どの段階から立て直すかを一緒に整理します。
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