棒の左に30g、右に20g。つり合う位置を聞かれて、子どもが「真ん中」と答える。重さが違うのに真ん中でつり合うはずがない、と大人はすぐ気づきますが、てこの問題が苦手な子にとっては、そこが見えていません。
てこの問題は、中学受験の理科で計算問題の入口になる単元です。ここでつまずくと、ばね、滑車、浮力と続く力学の単元がすべて苦しくなる。てこのつり合いを、式を覚えるのではなく、仕組みとして理解する方法を説明します。
例題は本記事のための自作です。実際の入試問題ではありません。
てこがつり合う条件
てこがつり合うのは、支点の左右で「重さ×支点からの距離」が等しいときです。この「重さ×距離」を、てこを回そうとするはたらきと考えます。
考え方 左は40×30=1200。右も1200になればよいので、60×□=1200。□=20cm
図1 距離はどちらも支点から測る
重いおもりほど支点の近くに、軽いおもりほど遠くにつるすとつり合う。この感覚を先に持っておくと、計算の答えが正しいかどうかを自分で確かめられます。例題1でも、重い60gが20cm、軽い40gが30cmなので、感覚と合っている。
つまずく子が見落としていること
てこの計算でつまずく子の多くは、距離を棒の端から測っています。距離は必ず支点から測る。棒の長さや端からの位置が問題文に書かれていても、支点からの距離に直してから式を立ててください。
もう一つは、おもりが片側に2つ以上あるときです。左に2つつるされていたら、それぞれの「重さ×距離」を求めてから足す。重さだけを足してから距離をかけると、答えが合わない。
家庭で丸付けをするときは、答えより先に、式の中の距離がすべて支点から測ったものになっているかを見てください。ここが合っていれば、計算の間違いは本人が見直しで気づけます。
棒の重さを考える問題
小6になると、棒そのものの重さを考える問題が出てきます。太さが一様な棒なら、棒の重さは棒の真ん中に集まっていると考える。
考え方 棒の重さ30gは真ん中、つまり左端から30cmの位置にかかる。支点からは右に10cm。右に回すはたらきは30×10=300。左端は支点から20cmなので、□×20=300。□=15g
図2 棒の重さは真ん中に矢印を描き込む
棒の重さを忘れて、つり合わない答えを出す子が多い。問題文に棒の重さが書かれていたら、まず棒の真ん中に矢印を描き込む習慣をつけましょう。図に書き込むだけで、見落としはかなり減ります。
支点が棒の端にあるとき
支点が棒の端にあって、ばねばかりで棒を持ち上げる問題もよく出ます。この場合も考え方は同じで、支点を中心に、回そうとするはたらきが左右で等しくなる。
上に引く力も、下に引く力と同じように「力×距離」で考えます。向きが違うので、回す向きがどちらになるかを矢印で確かめてから式を立ててください。慣れないうちは、棒の図に回る向きを丸い矢印で描き込むと混乱しません。
輪軸と滑車につなげる
てこの考え方は、輪軸と滑車の問題にもそのまま使えます。輪軸は、大きさの違う2つの輪が同じ軸で回る道具で、てこの一種だ。大きい輪にかかる力と半径の積が、小さい輪にかかる力と半径の積に等しいときにつり合う。てこの「重さ×支点からの距離」の距離を、輪の半径に置きかえただけです。
動滑車は、おもりを2本のひもで支えるので、ひもを引く力はおもりの重さの半分になる。そのかわり、ひもを引く長さはおもりが上がる高さの2倍になります。力が半分になる分、引く長さが2倍になる、という関係は、てこで重さと距離が逆の比になるのと同じ考え方だ。
小6の入試問題では、てこ、輪軸、滑車を組み合わせた問題がよく出ます。組み合わさると難しく見えますが、一つずつ分けて、それぞれでつり合いの式を立てれば解ける。複合問題で手が止まる子は、どこで分けるかが見えていないことが多いので、図に区切りの線を引いてから考えさせてください。
てこを仕組みで理解している子は、輪軸や滑車に進んだときに新しく覚えることがほとんどない。逆に、てこを公式だけで覚えている子は、道具が変わるたびに別の公式を覚えることになり、力学全体が苦手になっていきます。
家庭でできる練習
てこの問題は、図を描けば半分は解けます。問題を読んだら、棒、支点、おもり、距離を必ず図にする。距離は支点からの長さを書き込む。この手順を毎回同じようにくり返してください。
1日に解く問題は3問で十分です。同じ型を3日続けて、図を見ずに式を立てられるようになったら、棒の重さがある問題、支点が端にある問題へと進みます。家にある定規と消しゴムで実際につり合わせてみるのも、感覚をつかむのに役立ちます。
比の考え方を使うと、てこの問題はさらに速く解けます。おもりの重さの比と、支点からの距離の比は逆になる。例題1なら、重さの比40:60=2:3に対して、距離の比は3:2です。比の扱いに不安がある場合は比の問題で実際の数と混ぜてしまうのはなぜかも参考にしてください。
よくある質問
「公式を覚えさせたほうが早いのでは」と聞かれることがあります。たしかに「重さ×距離が等しい」という式だけ覚えれば、基本の問題は解ける。ただ、棒の重さや複数のおもり、輪軸が出てくると、式だけでは何をかけて何を足すのかが分からなくなる。仕組みを理解していれば、問題の形が変わっても同じ手順で式を立てられます。
「図を描くのに時間がかかる」という心配もよく聞きます。最初のうちは時間がかかって当然です。図を描く練習を2週間ほど続けると、描く速さは上がり、式を立てる時間はむしろ短くなる。入試本番でも、図を描いた子のほうが見直しで間違いに気づきやすくなります。
力学の苦手を一緒に確かめる
てこが苦手な子は、計算ができないのではなく、図の中で何を見ればいいかが分かっていないことが多い。答案だけでは、その部分は見えにくい。
INSPIRE ACADEMYの理科の授業では、お子さまに図を描いてもらいながら、どこで距離を取り違えるかを確かめます。止まる場所が分かれば、練習は一つに絞れます。てこの問題で手が止まる答案があれば、そのままお持ちください。
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