三権分立とは、国の権力を「立法権」「行政権」「司法権」の三つに分け、国会・内閣・裁判所がそれぞれ受け持つしくみです。一つの機関に力が集中しないよう、三つがおたがいに見張り合います。
中学受験で点を落としやすいのは、三つの名前ではなく「矢印の向き」です。「内閣不信任決議」と言えても、どこからどこへの働きかけかを図で聞かれると迷う。そんなときは用語を覚え直す前に、全体図を一枚で確認します。
この記事では、公民を学ぶ小学生と保護者に向けて、三つの機関をつなぐ6本の矢印と、国民の関わり方を整理します。対象は日本国憲法のもとでの日本のしくみです。
内容確認:2026年10月15日。図と確認問題は学習用に独自作成したものです。
三権分立の全体図を一枚で見る
まず、三つの機関の位置を決めます。上に国会、左下に内閣、右下に裁判所。三角形の各辺に、行きと帰りの矢印が1本ずつあります。3本の辺×2方向=6本と数で押さえると、抜けが見つけやすくなります。
図1 国会・内閣・裁判所をつなぐ6本の矢印
内閣総理大臣の指名/内閣不信任決議(衆議院のみ)
衆議院の解散/臨時会の召集の決定
弾劾裁判所の設置(裁判官をやめさせるかを判断)
法律が憲法に違反していないかの審査(違憲立法審査)
最高裁判所長官の指名/その他の裁判官の任命
命令・規則・処分が憲法や法律に違反していないかの審査(行政裁判)
入試で特によく問われる働きかけにしぼった模式図です。国民との関係は図3で別に示します。
矢印を覚えるときは、「相手の人を決める矢印」と「相手をチェックする矢印」に分けると整理しやすくなります。1の総理大臣の指名や5の長官の指名は人を決める働き、4や6の審査はチェックの働きです。
裁判所から出る矢印(4と6)は、どちらも「憲法に違反していないかを調べる」働きです。法律が相手なら国会へ、命令や処分が相手なら内閣へ。何を調べるかで向きが決まります。
国会・内閣・裁判所の役割を表で比べる
国会は法律をつくり、内閣は法律にもとづいて政治を行い、裁判所は法律にもとづいて争いを裁きます。「つくる」「行う」「裁く」の三つの動詞で区別すると、選択肢の文章を読んだときに判断しやすくなります。
| 機関 | 権力 | 主な仕事 |
|---|---|---|
| 国会 | 立法権 | 法律の制定/予算の議決/条約の承認/内閣総理大臣の指名/憲法改正の発議 |
| 内閣 | 行政権 | 法律の執行/予算の作成/条約の締結/政令の制定/天皇の国事行為への助言と承認 |
| 裁判所 | 司法権 | 裁判を行う/法律や命令などが憲法に違反していないかを審査する |
条約と予算は、国会と内閣の両方に出てくるため混ざりやすい言葉です。条約は内閣が「締結」し、国会が「承認」する。予算は内閣が「作成」し、国会が「議決」する。先に内閣が案をつくり、後から国会が決めるという順番で覚えます。
指名と任命を取り違えない
「指名」はこの人にしてくださいと選ぶこと、「任命」は正式にその職につけることです。内閣総理大臣も最高裁判所長官も、選ぶ機関と正式に任命する人が別になっています。
| 役職 | 指名する | 任命する |
|---|---|---|
| 内閣総理大臣 | 国会 | 天皇 |
| 最高裁判所長官 | 内閣 | 天皇 |
| 国務大臣 | ― | 内閣総理大臣(過半数は国会議員) |
| その他の最高裁判所の裁判官 | ― | 内閣 |
表の上の2行は、どちらも「指名した機関とは別に、天皇が任命する」という同じ形です。天皇の任命は内閣の助言と承認にもとづく国事行為で、天皇が自分の判断で人を選ぶわけではありません。「天皇が選ぶ」と答えていたら、指名と任命の意味から確認し直します。
内閣不信任決議と衆議院解散の流れ
内閣不信任決議ができるのは衆議院だけです。可決されると、内閣は10日以内に衆議院を解散するか、総辞職するかを選ばなければなりません。図1の矢印1と2が、ここで一つの流れとしてつながります。
日数の問題は、数字だけを並べて覚えると混ざります。「何から数えて」「何までに」を一組にして、下の流れ図でたどってください。
図2 不信任決議の可決から新しい内閣まで
このとき内閣は総辞職
解散はしない
不信任決議が可決された場合の基本的な流れです。不信任決議がなくても、内閣が衆議院を解散することがあります。
Aの道を選んでも、総選挙の後に内閣はいったん総辞職します。そのため、どちらの道でも最後は「国会による内閣総理大臣の指名」に行き着きます。同じ人が再び指名されることもありますが、手続きとしては新しく選び直しています。
参議院には解散がなく、内閣不信任決議の制度もありません。参議院が出す「問責決議」には、内閣に解散や総辞職を求める法的な力はない。この差が、衆議院の優越と結びついて出題されます。
国民が三つの権力に関わる三つの方法
三権分立の図の中心、または外側には国民がいます。日本は国民主権の国なので、国民は三つの機関すべてに働きかけることができます。方法は機関ごとに違うため、組み合わせで覚えます。
図3 国民から三つの機関への働きかけ
主権をもつ
選挙
国会議員を選ぶ
世論
多くの人の意見で政治に影響を与える
国民審査
最高裁判所の裁判官がふさわしいかを判断する
入試でよく問われる組み合わせを示した図です。国民が裁判に参加する裁判員制度もあります。
国民審査の対象は最高裁判所の裁判官だけです。任命後に初めて行われる衆議院議員総選挙のときに、投票用紙へ「やめさせたい裁判官」に×を書く形で行います。高等裁判所や地方裁判所の裁判官は対象ではありません。
世論は、投票のような決まった手続きではありません。新聞やテレビ、インターネットなどを通じて多くの人の考えが広がり、政治に影響を与えるものです。「世論で内閣をやめさせる」といった、制度のように書かれた選択肢には注意します。
入試でねらわれる五つのひっかけ
正誤問題では、正しい知識の一部だけを入れかえた文がよく出ます。次の表の左側を読んで、どこが違うかを自分で言えるか確かめてください。
| ✕ まちがった文 | ○ 正しくは |
|---|---|
| 参議院も内閣不信任決議ができる | 内閣不信任決議ができるのは衆議院だけ |
| 違憲審査を行うのは最高裁判所だけ | すべての裁判所がもつ。最終的に判断する最高裁判所は「憲法の番人」と呼ばれる |
| 弾劾裁判所は裁判所の中に置かれる | 弾劾裁判所は国会に置かれ、国会議員が裁判員となる |
| 最高裁判所長官は内閣が任命する | 内閣が指名し、天皇が任命する |
| 国民審査ですべての裁判官をやめさせられる | 国民審査の対象は最高裁判所の裁判官のみ |
どのひっかけも、図1と図3のどこかに答えがあります。まちがえた問題は表の正解を覚え直すだけでなく、図の上でその矢印を指でなぞってから解き直すと、次に形を変えて出されたときにも対応できます。
なお、三権分立の考え方を『法の精神』で説いたフランスの思想家はモンテスキューです。歴史の分野で人物名を問われることもあるので、公民と合わせて確認しておきます。
家庭で理解を確かめる三つの問い
最後に、図を閉じた状態で答えられるかを確かめます。用語が言えるだけでなく、「どこからどこへ」を説明できれば理解できています。答えは問いをタップすると表示されます。
問1 国会から内閣へ向かう働きかけを二つ答えましょう。
内閣総理大臣の指名と、内閣不信任決議です。不信任決議は衆議院だけができることまで言えれば十分です。
問2 「法律が憲法に違反していないかを調べる」のは、どの機関からどの機関への働きかけですか。
裁判所から国会への働きかけ(違憲立法審査)です。法律をつくるのが国会なので、矢印は国会へ向かいます。最高裁判所だけでなく、すべての裁判所がこの権限をもちます。
問3 内閣不信任決議が可決されたとき、内閣が選べる道は何ですか。
10日以内に衆議院を解散するか、総辞職するかのどちらかです。解散した場合は40日以内に総選挙、その後30日以内に特別国会が開かれ、そこで内閣は総辞職します。
答えに詰まった問いがあれば、その部分の図に戻ります。白い紙に三角形を描き、6本の矢印と国民からの3本を自分で書き込めるようになれば、三権分立の基本は固まっています。選挙や国会のニュースを見たときに、図のどの矢印の話かを家族で話してみるのも、時事問題への良い準備になります。
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