仕事算を教科書どおりに教えると、最初の一歩で分数が出てきます。全体の仕事を1として、1日にできる量は12分の1。ここで多くの子が脱落します。
分数の足し算そのものは小5でできます。それでも詰まるのは、12分の1という数が何を表しているのかが見えないからです。目に見えない量を分数で扱うのは、大人が思うより負担が大きい。
解決策があります。全体を1ではなく、整数に置き直すことです。この記事ではその方法を図で説明します。
全体を1ではなく整数にする
仕事の全体量は、問題文のどこにも書かれていません。書かれていないということは、こちらで好きな数に決めてよいということです。
決め方にはコツがあります。かかる日数の最小公倍数にする。そうすると1日あたりの量が必ず整数になり、分数が一度も出てきません。
問題1
ある仕事を、Aさん1人でやると12日、Bさん1人でやると6日かかります。2人で一緒にやると何日で終わりますか。
12と6の最小公倍数は12。そこで、全体の仕事を12と決めます。
図1 全体の仕事を12として考える
仕事の全体 12
全体12のうち、2人で1日に3ずつ進む。12÷3=4日で終わる。分数は一度も出てこない
Aさんは12日で全部を終えるので、1日にできるのは12÷12=1。Bさんは6日なので12÷6=2。2人合わせて1日に3。
全体が12で、1日に3進むので、12÷3=4日。これが答えです。教科書の方法で解くと12分の1と6分の1を足して4分の1、その逆数で4日となりますが、出てくる数字は同じです。整数のほうが子どもには見えます。
途中で交代する問題
問題2
同じ仕事を、はじめの4日間はAさん1人でやり、残りをBさん1人でやりました。全部で何日かかりましたか。
図2 仕事を2人で分け合ったとき
合計 4+4=8日
帯を2人で分け合う形にすると、どちらが何を担当したかが一目で分かる。残りの量を先に出すのが手順
交代する問題は、残りの量を出す一手を飛ばすと解けません。全体から先にやった分を引く。この引き算を図の上でやらせてください。帯のどこまでが済んだのかを指で押さえると、ミスが減ります。
全体量の決め方
最小公倍数にするのが基本ですが、慣れないうちは「日数を全部かけた数」でも構いません。数が大きくなるだけで、答えは変わりません。
| 問題の条件 | 全体量 | 1日あたり |
|---|---|---|
| A12日/B6日 | 12 | A 1/B 2 |
| A10日/B15日 | 30 | A 3/B 2 |
| A8日/B12日/C24日 | 24 | A 3/B 2/C 1 |
| A7日/B5日 | 35 | A 5/B 7 |
4段目に注目してください。7日かかるAさんのほうが1日あたりの量は5で、5日かかるBさんは7。かかる日数が多い人ほど1日の量は少ない。この逆の関係に気づかせておくと、答えの妥当性を自分で判断できるようになります。
子どもがつまずく3か所
全体量を勝手に決めてよいことが信じられない
問題文に書いていない数を自分で決める、という作業に抵抗があります。全体を12にしても24にしても答えが同じになることを、一度実際に両方でやらせてみてください。納得の仕方が変わります。
日数と1日の量を取り違える
12日と1日の量1が、どちらも同じ問題の中に出てくるので混線します。図に書き込むときは、帯の中が量、帯の外が日数と決めておくと整理できます。
最後に日数に戻し忘れる
全体量を12と置いたあと、答えとして3や8を書いてしまう間違いです。聞かれているのは日数。最後に「何日か」を声に出して確認させてください。
家庭で使える声かけ
全体の仕事、いくつにしたら計算が楽になりそう
最小公倍数という言葉を先に出さず、自分で選ばせます
Aさんは1日にいくつ進む
全体÷日数。ここを整数で出せれば半分は終わりです
2人だと1日にいくつ
足し算するだけ。ここで速さの合計と同じ考え方だと気づく子もいます
いま出した数は、日数なの、仕事の量なの
最後の確認。取り違えの大半がここで防げます
旅人算で2人の速さを足したのと、仕事算で1日の量を足すのは同じ構造です。速さの単元をすでに済ませているなら、そこと結びつけて説明すると理解が早くなります。
よくある間違いと対処
日数を足してしまう 12日と6日を足して18日、あるいは平均して9日。2人でやったのに1人より遅くなるのはおかしい、と気づかせてください
交代の問題で残りを出さない 全体から済んだ分を引く一手です。図2の帯で、どこまで塗られたかを確認させると防げます
割り切れないときに止まる 8÷3のように割り切れない場合は、分数のまま日数で答えます。3分の8日、つまり2日と3分の2日。ここだけは分数が必要です
学年ごとの進め方
小5前半まで
最小公倍数と割合が入っていない段階では、まだ早い単元です。無理に進めず、公倍数の練習を先に済ませてください
小5後半
この記事の段階です。2人の共同作業と、途中交代の2パターンを整数で処理できれば十分。分数の解き方は後回しで構いません
小6
3人以上、休みが入る、途中から人数が増える設定へ。ニュートン算もこの延長線上にあります。整数で考える習慣があると移行が楽です
入試で出るのは小6の応用形です。ただ、設定が複雑になっても「全体をいくつと置くか」「1日にいくつ進むか」の2つを出す手順は変わりません。ここを崩さないことが大切です。
INSPIRE ACADEMYでの仕事算の扱い
仕事算でつまずいている子を見ると、原因が仕事算にないことが多くあります。最小公倍数が素早く出せない、割合の意味が曖昧、速さの単元が抜けている。そのいずれかです。
当塾では、単元でつまずいたときに前に戻る判断を重視しています。同じ単元を繰り返すより、原因のある場所に戻るほうが早く解決します。どこまで戻るかは、答案を見て決めます。
まとめ
仕事算は、全体を1ではなく日数の最小公倍数に置くと分数が出てきません。A12日・B6日なら全体は12。1日あたりはAが1、Bが2、2人で3。12÷3=4日です。
途中で交代する問題は、全体から済んだ分を引いて残りを出す一手が要ります。図2のように帯を分け合う形で描かせてください。
聞くべき一問は「いま出した数は、日数なの、仕事の量なの」です。仕事算の失点の多くは、この取り違えから起きています。